shoeihidoさんの
に触発されて、「年収は「住むところ」で決まる-─-雇用とイノベーションの都市経済学」
を買って読んでみました。
結論:かなり面白かったです。読む価値あります。
すらさんありがとう!良い本に出合いました!
だいたいまとめると
1) 先進国で低付加価値の製造業が破壊(特に雇用が)されるのはもう避けられない。その代わりに、アイデアや斬新さ、世界を変えるようなイノベーションで駆動する産業が先進国の経済をドライブする。
2) イノベーション駆動の産業は人・組織のつながりでより加速するので、ひとところに企業や優秀な人材があつまる(イノベーションハブ)。集まることでよりハブは強くなるので、その集まった地域だけが急速に地位を向上していくし、イノベーションハブに引き寄せられる優秀企業はそこから抜け出ることがなくなる*1。 人の面でも、イノベーションハブの企業のビジネスは個々人の知的生産性の高さで勝負しているので、優秀な高給取りが集まってくる*2。
3)イノベーション産業自体は少数精鋭の高給取りが主役なのでマスを支えることはできないが、イノベーションハブを支える地域経済(スーパーとかレストランとかお医者さんとかクリーニング屋さんとかその他もろもろ)を急速に潤すことができて、かつこの波及効果が製造業よりもずっと大きい。そのため、イノベーションハブでは「すべての知的階級と職層の」給料(と物価)が上昇する。
4) 一方、イノベーション産業から取り残された場所(「ラストベルト」)は相対的に経済的に沈んでいく。このながれをひっくり返すための処方箋はいまだ存在しないし、つまりイノベーションハブを狙って作ることは難しい。
5) 沈みゆく地域から脱出するのは、知的階層の上位に属する人たちがメイン。苦しい目にあう下位の人たちは、情報断絶による機会喪失や、経済的困窮により移住したくてもできないなどの理由でその場所に縛り付けられる。これは比較的引っ越しの多いアメリカでもそうなっている。
感想
・一時期、「フラット化する世界」が流行したわけですが、現実には格差は国単位どころか地域・都市単位で発生している状況ですね(東京vs地方)。しかしながら先進国の発展のためには格差を助長するイノベーションハブにますます栄えてもらってもっと税収を上げて国全体に還流させる必要があるという・・・
・アメリカの強さの一つとしてイノベーションハブが多数あること、があるのかなと。日本(東京)、韓国(ソウル)、フランス(パリ)、イギリス(ロンドン)などはハブが一つしかない(あるだけましですが)から、そこに一極集中する。ドイツは伝統的にいろいろ分散しているんですが、その代わりに圧倒的なハブがない。
・日本だと愛知・名古屋圏が「製造業(自動車)のイノベーションハブ」としての機能を維持していると思うのですが、これは何か例外な仕組みが回っているのでしょうか?それともトヨタ系列が痛みにたえているだけ?
・これを見た後に今回のアメリカ大統領選挙、そしてトランプ大統領の「アメリカというかラストベルトへの製造業回帰(と雇用創出)」を切実に必要とする支持層、まだハネムーン期間なのにすでに険悪な対応をとる東西海岸部とそこにベースを置くメディア、なんともなるほど感というか。*3