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書評:発酵の科学

納豆好き、酒好きとしては発酵という化学過程について知見を深めることは教養だろ!ということで入手。

 

語り口はかなり教科書っぽい上に、薬のやつみたいにドラマチックな展開はあまりないので、 淡々と話が進む。そういう意味でエンターテインメント性は薄いけど、振り返るとよく整理されてすごく勉強になる。

こういう知識は、結局先人たちが長い年月の試行錯誤をへて、化学的に「コレ!」という最適パスを発見した積み重ねなんですよね。Test of Timeとはいうけど、本当に化学的に妥当なプロセスが見事に見つかるものなんだなぁって感じ入るし、それを守り続けてきた日本の食文化に乾杯。

 

個人的には、醤油・味噌のあたりの化学反応やトピックの多さが楽しかったです。

そこかしこに著者の和食発酵食品や微生物への愛を感じられます。

 

 

第一章は発酵の基本的なご利益が説明される。

  • 乳酸菌や食塩ドバー-->pHを酸性に傾けることで細菌や微生物が生きていけなくする=保存を効かせる
  • タンパク質をアミノ酸に分解して旨味をひきだす
  • 豆類(植物性たんぱく質)は「固い」ので吸収しにくい。これを壊して緩くして吸収できるようにする

 

第二章で発酵の基本的なプロセスが化学的に説明される。こうやって整理されるといろいろと腑に落ちることが多くてためになる。

OH基(ヒドロキシ)、COOH基(カルボキシル)、NH2基(アミノ)

呼吸(酸素使用)は完全燃焼でたくさんATPできる。乳酸発酵・アルコール発酵はちょっとしかできないけど酸素不足の急場の筋肉でも使う

堆肥は土にまくので有機物はいらなくてミネラルとかが欲しい。なので好気性細菌による呼吸発酵で有機物をガンガン燃やす。風通しよければどんどん温度が上がって有害な物質や虫・細菌を死滅した良い肥料になる

酪農用の飼料は有機物が必要。乳酸菌などの嫌気性発酵で安全を確保しつつ、有機物は燃やし尽くさないようにする

 

第三章は著者の専門に近いようで、明らかに「愛」が文面からあふれ出てくる・・・。麹・乳酸菌・酵母という、発酵の主役を担う微生物たちの生態と発酵のしかた、「使える」微生物たちの発見と育成の歴史、さらには安全性などについて、結構な専門的な知識が披歴される。ああ、研究対象なんだなぁって。

 

第4章からは具体的な発酵食品グループごとの詳細が説明される。第四章は大豆発酵食品。納豆・味噌・醤油。

・ねばねばの納豆は日本だけ。粘々は半分崩壊したたんぱく質の成れの果てで、崩壊してグルタミンが出てくると美味しいから賞味期限ぎりぎりが納豆は良い

・味噌や醤油の色風味を決めるメイラード反応は実はまだ詳細が解明されていない。褐色色素であるメラノイジンはフリーラジカルを殺して抗酸化作用をもつので身体によろしい

・醤油もメイラード反応。基本的にゆっくりじっくりな化学反応なので、味噌や醤油は半年~の熟成期間が必要

 

 第五章は乳酸発酵。漬物は乳酸発酵とはかぎらない(浅漬けとか)けど、代表格としてぬか漬けが取り上げられる。あとはザワークラウトとか、ヨーグルト、チーズ。

 

第六章はその他の発酵食品。酢ってお酒の「さらに先」の発酵食品とはしらなかった。酒がつくれるものならなんでも酢になるんだね・・・・。

ワインビネガーとかバルサミコ酢っておいしいよね、ブドウ万歳!